「なんでこんなこともできないんだ!」
昔はよく聞く言葉でした。
最近テレビでも某大御所風タレントの方が、
窃盗依存症に対して「なんにでも病気にすればいいものか」
と発言されていました。
納得できる部分はありますが、実際に「できない」ことを
「できる」ようにするにはそれなりの治療が必要です。
現代の教育では、「できない」ことへのとらえ方を
変えていく必要があります。
発達障害や学習障害の観点から塾講師のできること、
そして、保護者の方々が塾講師に訴えることができることを
お伝えしたいと思います。
(1)始めに (2)できないものはできない (3)障害についての知識 (4)塾講師としてできること
(1)始めに
かつての日本の教育はいかに周りと足並みを揃えることができるか
基準として決められた「線」のようなものをいかに超えることができるか
というところに重きをおいていました。
近代的な学校というのは、そもそもの始まりは
軍国時代の日本で生まれました。
ですので、協調性・命令への服従性は
とても大切な要素として受け継がれています。
この「和」を乱すものは「できそこない」とされてきました。
しかし現代ではその風習は少しずつ失われています。
個人の力を大切にし、「できること」を伸ばそうという
試みは少しずつ浸透しているように感じられます。
しかし、「塾」は違います。
お金をもらって「成績を上げてください」と
言われている以上はそうせざるを得ません。
もちろん、できないことはできないと断っている塾も
たくさんありますが、そうでない塾もたくさんあります。
そのような現状で「できない」子どもたちが非常に
苦しんでいるという現実があるのです。
(2)できないものはできない
「なんでこんなこともできないの」
「なんで人の話が聞けないの」
「こんなのここを読めばすぐにわかるじゃん」
塾講師は「成績をあげる」という自分の商品価値を上げるために
やっきになることがあります。
教えているのに伝わらない。
こうしたらいいのに、教えたとおりにできない。
どの塾講師もそんな場面に出くわしていると思います。
私も今までにたくさんありました。
もちろん、ただただやる気がない。
勉強に意味を感じていない。
という理由で前向きになれない生徒もいます。
そういった生徒の対応は簡単です。
保護者・本人と話し合い、今後の計画について
どうしていくのかを決めてしまえばいいのです。
計画達成のために前向きになれれば、塾への在籍を認めればいいし、
どうしても前向きになれないのであれば、保護者の満足のいく
指導は提供できないとお断りすればいいのですから。
指導というのは基本的には二人三脚。
生徒と講師の気持ちがそろって初めて100%以上の効果を
発揮することが出来るのです。
しかし「できない」子は違います。
発達障害・学習障害を抱えている子どもは
本当に「できない」のです。
それは例えるならば、100mを10秒で走れと
言われているようなものなのです。
「できない」ものは「できない」と
理解するのも塾講師の勤めです。
「できるのにできない」子と
「できない」子の区別を授業で判断するのは
とても難しいですが、熟練の講師であれば生徒の様子を見れば
真剣に取り組んでいるかどうかがわかるはずです。
明らかに真剣に取り組んでいるのに、理解に苦しんでいる子は
講師側が一度相談に乗ってあげるとよいでしょう。
(3)障害について知識
私は教員免許を取得するまで、
塾講師には資格などいらないと考えていました。
今でも資格の有無は特に重要ではないと思います。
しかし、学習障害や発達障害についての知識は
持たなければならないと考えています。
なぜなら、一度挫折感を味わった子どもを
同じステージで活躍させるためには
本人の強い意思が必要となるからです。
私は教員免許取得の過程で学習障害などを知ることができました。
学校で勉強ができない烙印を押され、
塾でも同じように勉強ができないとされれば、
子どもはたちまち自信を喪失してしまいます。
塾講師は子どもから勉強という一面で
その未来を奪いかねない責任感ある仕事でもあるのです。
(4)塾講師としてできること
塾講師としてできることは、一人ひとりの成長を
しっかりと見守ることです。
そして、学習障害の可能性をを感じれば、
保護者に相談してみるのも良いかもしれません。
しかし、やはり親というものは子どもが障害で
あるという可能性は信じたくないもの。
伝え方がとても重要になります。
さらにもし学習障害でなければ、塾への悪評へと繋がります。
塾は慈善事業ではありません。
もし、子どもたちのためを考えることが出来る講師であれば
その理想をかなえるために、利益を上げ続けなければなりません。
専門家ではないので、あくまで可能性の範囲として
アドバイスとして伝える形にするのがベストでしょう。
そして伝えられた保護者はその可能性を信じて、
然るべき機関で、診察してもらうとよいでしょう。
子どもたちにもできること、できないことがあるように
塾にもできること、できないことがあります。
それを把握するのが大切です。
できるように努力することは大切です。
しかし、できないことを強いるのは努力ではありません。
子どもを取り巻く環境がそれを理解できるようになり
協力し合えるのが理想の環境です。
一人でも多くの塾講師がそれを理解して
一人でも多くの子どもが素晴らしい成長が
できることを願っています。